会社の会議で「何か問題はありませんか」と聞かれても、誰も発言しないことがあります。
ところが、会議が終わり、休憩室や飲み会で話していると、「実は、あのとき少しおかしいと思っていた」「前にも似たことがあった」といった話が出てくることがあります。
不思議なことですが、企業の現場では珍しくない光景です。
そこには、公式な報告書には残っていない大切な情報が含まれている場合があります。
なぜ、大切な情報が会議で出てこないのか
会議では、自分の発言が上司や同僚から評価されることがあります。
間違ったことを言いたくない。余計な問題を起こしたくない。まだ確信が持てないので発言を控えよう。
こうした気持ちが働くこともあるでしょう。
一方、気心の知れた同僚との雑談なら、「ちょっと気になったんだけど」と話しやすい場合があります。
DS理論では、この違いを人間の「関係的安定」という視点から考えます。
人は、自分の所属や役割、評価、信頼関係などを意識しながら行動しています。発言することで、それらが不安定になると感じれば、言葉を控えることも考えられます。
もちろん、発言しない理由は評価への不安だけではありません。時間的な余裕がない、質問が漠然としている、問題をまだ十分に整理できていない、といった可能性もあります。
重要なのは、「なぜ報告しなかったのか」と責める前に、報告できなかった背景を考えることです。
本音の中に、組織の知恵がある
例えば、製造現場で機械の音がいつもと少し違うと感じたとします。
まだ故障しているわけではありません。明確な異常だと断定できるわけでもありません。
しかし、経験豊富な作業者なら、過去に似た音を聞いたことがあり、何かを確認したほうがよいと考えるかもしれません。
その判断の背景には、マニュアルだけでは伝えきれない経験があります。
「なぜ気になったのか」「過去に何があったのか」「何を危険と考えたのか」
こうしたことを聞き、確認していくことで、熟練者の経験が他の人にも理解できる知恵になっていきます。
日報を会社の知識資産にする
通常の日報には、作業内容、問題、対策、結果などが記録されます。
そこにDSの考え方を取り入れ、「何に気づき、何を考え、なぜその判断をしたのか」という背景も残せるようになれば、日報の価値は大きく変わります。
単なる出来事の記録ではなく、未来の判断に役立つ「判断知」が蓄積されていくからです。
さらにAIを活用すれば、過去の判断事例を整理し、現在の状況に応じて参照できる仕組みへと発展させることも考えられます。
ただし、過去の判断をそのまま正解として使うのではありません。背景や条件を確認し、今の状況に合わせて人間が判断し直すための材料として活かすのです。
DS理論を組織に取り入れる価値は、単にコミュニケーションをよくすることだけではありません。
これまで個人の経験や非公式な会話の中に埋もれていた知恵を、組織全体の知識資産へと育てられる可能性があることです。
あなたの会社では、現場の大切な気づきや経験が埋もれていませんか?
会議では語られない現場の違和感、雑談の中で交わされる本音、熟練者だけが持つ判断の知恵。
こうした情報には、問題の早期発見や業務改善、次世代への知識継承につながる価値があります。
DS理論による人間理解と対話を入口に、現場の気づきや経験を「判断知」として言語化し、AIも活用しながら会社の知識資産へと育てる取り組みを進めています。
