「うれしかったね」が、ずっと残る。

子どもがふと、数年前の出来事を覚えていて驚いたことはありませんか？

「ママと一緒にあの公園で遊んだの、楽しかったね」
「誕生日に泣いちゃったけど、パパが抱っこしてくれた」

大人からすると、なんてことない日常でも、
子どもの脳の中には、まるで宝物のように、ある一瞬の体験が刻まれていることがあります。

それには、ちゃんとした理由があります。

私たちの脳は、感情と結びついた記憶を、特に強く残すようにできているのです。

楽しかったこと、悔しかったこと、怖かったこと。

そのとき感じた“気持ち”が、記憶の芯となって脳に焼きつく。
それが「エピソード記憶」という、物語のような記憶です。

だからこそ、親として大切にしたいのは――
子どもがその時に感じた感情を、そっと言葉にしてあげること。

たとえば、

• 「一人で発表できて、ドキドキしたけど、終わってうれしかったね」
• 「負けちゃってくやしかったね。でも、最後まで頑張ってたよね」
• 「今日はつらかったけど、お母さんはそばにいたよ」

そうやって感情を一緒に感じて、共有して、言葉にする。

そのひと言ひと言が、記憶と一緒に子どもの心に残り、
次に何かに挑戦するときの「心の土台」になるのです。

感情は、ただの気分ではありません。
脳を動かし、記憶を深め、人生の選択を導くものです。

子どもが今日、どんな気持ちを味わったか。
そして、親としてそれをどう受け止めてあげたか。

それが積み重なった先に、
「自分の感情を大切にできる子」
「経験から学べる子」
そんな人間的な強さが育っていくのだと思います。

だから今日もまた、
「うれしかったね」
「がんばったね」

そのひと言を、忘れずに。