私が脳研究の世界と出会ったのは、1990年代のことでした。

脳の測定装置の開発を間近にして、脳を学びはじめたのですが、脳の学習、注意、認識といった基本的な機能から、人の感情、成長、“愛”といった領域まで、サイエンスの眼で理解が進んでいることに衝撃を受けました。そして、私たちは、脳の解明が進むいまの時代を生きているからこそ、脳を理解し、“脳”の視点で人の心を考えられる、人類史上なんてラッキーな瞬間に生まれ生きているのだろうと興奮したものです。

これがラボ設立の原動力になり、今に至ります。

私は、大学の宇宙物理学教室でプラズマ研究を行う中で、ミリ波（いまで言う６G以降の周波数）の実用に興味を持ち、大学院から旧郵政省通信総合研究所（現・情報通信研究機構）でその開発の一端を担いました。そのときに同じ研究室で出会ったのが、脳の研究です。

情報システムの研究開発を行いながら、脳を知り、脳を情報システムとしてとらえる認知科学（脳科学・情報学・心理学・人類学・言語学・哲学・AIなどの学際領域）を学びました。そして、その知識を社会やビジネスで実践する中で、ものごとの捉え方が変わっていくことになります。

ちなみに、1990年代当時、AIは、まだまだ不十分なものでしたが、AIをつくることで、逆に脳を知ることができるということにも新鮮な感動を覚えたものでした。（一般的なAI教育では、どうしても、アルゴリズムとプログラミングが中心になるので、この視点が薄いのはもったいない気がします。そこはラボのコンテンツに反映されています。）それは、AIが高度化し活用が進むいまこそ必要とされる視点だと思います。

こうした経験から、ITの黎明期にして、ITの行きつく先は脳の時代だと確信し、イメージを膨らます中で、HEARTSHEART（ヒーアート・シーアート）という言葉を発案しました。（HEARTSHEARTの中に、He Art, She Art があり、２つのHEART（こころ＝脳）があります）

この言葉には、人類共通の機能のである「脳」を理解することで、マニュアル運転で創造性を高め（意識的に視点を変え、発想する）、その上で、相互の考えを出し合うことで、相乗的に価値を創造する、そんな社会につなげたいという想いが込められています。

しかし、人は、その特性上、どうしもオートマティックに動いていて、なかなか視点を変え、気づきを得られないものです。「脳」の使い方を知ることで、オートマティックな状態を意識して、マニュアル運転を行う。さらに、「AI」の活用によって、自分の限界を超え、創造的な企画と課題解決を行う。

そういった状態への第一歩が、ラボのKOTO事業「学び」、MONO事業「遊び」の開発・提供です。